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ヴァンパイアのファンサイト〈ヴィラ・ディオダティ〉は、
ポリドリっていう男がヴァンパイアについて好き放題書くためにはじめたサイトで、
サイトの片隅に誰でも書き込めるBBSが設置されてからは、なんとなくそっちがメインになってしまった。
本家ヴィラ・ディオダティのように創作した怪談話を持ち寄って、
新たなモンスターの誕生を・・・・と、いきたいところなんだけどつい話は逸れて、
最強のヴァンパイア決定戦とか、都市伝説めいたくだらない話題で盛り上がったりしていた。
サイモンが初めて〈ヴィラ・ディオダティ〉に現れたのは、2年くらい前のことだった。
彼のハンドルネームは、ブラッドベリ。血の苺。
茶化したムードになりがちな匿名のコミュニティの中で、彼の書き込みは妙に浮いてみえた。
コイツには敵わないかもしれないと思う相手に対して、特にネットの世界においては迂闊に手が出せないものだ。
案の定、誰も様子見を決め込んだまま、サイモンの書き込みは過去ログへと流れてしまった。
もう現れないかもしれない。
少し残念に思っていたら、数週間後、再び彼は現れた。
待ち構えていたように何人かが彼のコメントに反応し、はたして彼は常連の一人となった。
送信者:ブラッドベリ
神なるものは存在しない
生物なるものは存在する
愛なるものは存在しない
肉体なるものは存在する
生命なるものは存在しない
血なるものは存在する
信じるかどうかの問題ではない
それが事実だ
これが、サイモンの最初のポスト。
サイモンは時々、こんな感じで詩の断片のような独り言のようなポストをしていたんだけど、
そこに居続けているのかいないのか、僕らの話に絡んでくることはほとんどなかった。